社会福祉士の倫理綱領
社会福祉法に基づき、公正・中立的な第三者機関が客観性を持って、福祉サービスの理念や具体的なサービス内容について専門的な視点から評価を行い、もって「利用者の立場に立った」「良質かつ適切な」福祉サービスの提供に資することを目的にした制度です。
この第三者評価をうけた事業者の多くが、「意義があった」と評価していますし、その内容として「改善するべき事項が明確になった」と応えています。
ソーシャルワークの定義
ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人々のエンパワーメントと解放を促していく。ソーシャルワークは人間の行動と社会システムに関する理論を利用して、人びとがその環境と 相互にに影響し合う接点に介入する。人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。(IFSW:2000.7.)
われわれは、ソーシャルワークの知識、技術の専門性と倫理性の維持、向上が専門職の職責であるだけでなく、サービス利用者は勿論、社会全体の利益に密接に関連していることを認識し、本綱領を制定してこれを遵守することを誓約する者により、専門職団体を組織する。
価値と原則
1. 人間の尊厳
社会福祉士は、すべての人間を、出自、人種、性別、年齢、身体的精神的状況、宗教的文化的背景、社会的地位、経済状況等の違いにかかわらず、かけがえのない存在として尊重する。
2. 社会正義
差別、貧困、抑圧、排除、暴力、環境破壊などの無い、自由、平等、共生に基づく社会正義の実現を目指す。
3. 貢献
社会福祉士は、人間の尊厳の尊重と社会正義の実現に貢献する。
4. 誠実
社会福祉士は、本倫理綱領に対して常に誠実である。
5. 専門的力量
社会福祉士は、専門的力量を発揮し、その専門性を高める。
倫理基準
1)利用者に対する倫理責任
1. 利用者との関係
社会福祉士は、利用者との専門的援助関係を最も大切にし、それを自己の利益のために利用しない。
2. 利用者の利益の最優先
社会福祉士は、業務の遂行に際して、利用者の利益を最優先に考える。
3. 受容
社会福祉士は、自らの先入観や偏見を排し、利用者をあるがままに受容する。
4. 説明責任
社会福祉士は、利用者に必要な情報を適切な方法・わかりやすい表現を用いて提供し、利用者の意思を確認する。
5. 利用者の自己決定の尊重
社会福祉士は、利用者の自己決定を尊重し、利用者がその権利を十分に理解し、活用していけるように援助する。
6. 利用者の意思決定能力への対応
社会福祉士は、意思決定能力の不十分な利用者に対して、常に最善の方法を用いて利益と権利を擁護する。
7. プライバシーの尊重
社会福祉士は、利用者のプライバシーを最大限に尊重し、関係者から情報を得る場合、その利用者から同意を得る。
8. 秘密の保持
社会福祉士は、利用者や関係者から情報を得る場合、業務上必要な範囲にとどめ、その秘密を保持する。秘密の保持は、業務を退いた後も同様とする。
9. 記録の開示
社会福祉士は、利用者から記録の開示の要求があった場合、本人に記録を開示する。
10. 情報の共有
社会福祉士は、利用者の援助のために利用者に関する情報を関係機関・関係職員と共有する場合、その秘密を保持するよう最善の方策を用いる。
11. 性的差別、虐待の禁止
社会福祉士は、利用者に対して、性別、性的指向等の違いから派生する差別やセクシュアル・ハラスメント、虐待をしない。
12. 権利侵害の防止
社会福祉士は、利用者を擁護し、あらゆる権利侵害の発生を防止する。
2)実践現場における倫理責任
1. 最良の実践を行う責務
社会福祉士は、実践現場において、最良の業務を遂行するために、自らの専門的知識・技術を惜しみなく発揮する。
2. 他の専門職等との連携・協働
社会福祉士は、相互の専門性を尊重し、他の専門職等と連携・協働する。
3. 実践現場と綱領の遵守
社会福祉士は、自らの先入観や偏見を排し、利用者をあるがままに受容する。
4. 業務改善の推進
社会福祉士は、常に業務を点検し評価を行い、業務改善を推進する。
3)社会に対する倫理責任
1. ソーシャル・インクルージョン
社会福祉士は、人々をあらゆる差別、貧困、抑圧、排除、暴力、環境破壊などから守り、包含的な社会を目指すよう努める。
2. 社会への働きかけ
社会福祉士は、社会に見られる不正義の改善と利用者の問題解決のため、利用者や他の専門職等と連帯し、効果的な方法により社会に働きかける。
3. 国際社会への働きかけ
社会福祉士は、人権と社会正義に関する国際的問題を解決するため、全世界のソーシャルワーカーと連帯し、国際社会に働きかける。
4)専門職としての倫理責任
1. 専門職の啓発
社会福祉士は、利用者・他の専門職・市民に専門職としての実践を伝え社会的信用を高める。
2. 信用失墜行為の禁止
社会福祉士は、その立場を利用した信用失墜行為を行わない。
3. 社会的信用の保持
社会福祉士は、他の社会福祉士が専門職業の社会的信用を損なうような場合、本人にその事実を知らせ、必要な対応を促す。
4. 専門職の擁護
社会福祉士は、不当な批判を受けることがあれば、専門職として連帯し、その立場を擁護する。
5. 専門性の向上
社会福祉士は、最良の実践を行うために、スーパービジョン、教育・研修に参加し、援助方法の改善と専門性の向上を図る。
6. 教育・訓練・管理における責務
社会福祉士は教育・訓練・管理に携わる場合、相手の人権を尊重し、専門職としてのよりよい成長を促す。
7. 調査・研究
社会福祉士は、すべての調査・研究過程で利用者の人権を尊重し、倫理性を確保する。